2010/07/09▼
2010-07-09▼
漱石が落語なら,鴎外は謡曲
明治の上位階層の物語である。東京帝大法学部主席卒業、恋の舞台はベルリンの目抜き通りウンターデンリンデン菩提樹の下。
恋の相手はトップダンサーながら名もなき貧しきレビューの踊り子エリス。
とくれば,誰でも話のsh時は想像出来ると思うが、はたして、文豪森鴎外の筆も期待に違わず進む。
19世紀末、ベルリンに国費留学中の官吏、太田豊太郎は下宿に帰る途中、涙に暮れる美少女エリスと出会い、恋に落ちる。
父の葬儀代を工面してやり、以後プラトニックなな交際を続けるが、狡猾なドイツ公使の誹謗中傷によって豊太郎は免職される。
官位を捨てた豊太郎はエリスと同棲、新聞社のドイツ駐在通信員という職を得て働く。エリスはやがて豊太郎の子を身篭る
嗚呼、委(く)はしくこゝに寫さんも要なけれど、余が彼を愛づる心の俄に強くなりて、遂に離れ難き中となりしは此折なりき。我一身の大事は前に横りて、洵(まこと)
に危急存亡の秋なるに、この行ありしをあやしみ、又た誹る人もあるべけれど、余がエリスを愛する情は、始めて相見し時よりあさくはあらぬに、いま我數奇(さくき)
を憐み、又別離を悲みて伏し沈みたる面に、鬢の毛の解けてかゝりたる、その美しき、いぢらしき姿は、余が悲痛感慨の刺激によりて常ならずなりたる腦髓を射て、
恍惚の間にこゝに及びしを奈何にせむ。
手,美文調で綴られても読む気しないよねえ。
漱石は落語,鴎外は謡曲ということがったか。
2010/07/02▼
2010-07-02▼
ストーリーがわかりやすい。
非常にすっきりとした話の運びになっていて、わかりやすい。
原文の漢文チックで典雅な雰囲気と、豊太郎の言い訳の嵐(笑)を
かみくだいてしまえば、豊太郎はやっぱり無責任男。
相沢と天方大臣は豪気なキャラ。
ただ、原作のアレンジはあってもいいのだが、
以下の2つはどうしてわざわざこんなアレンジを???と思った点。
1、困窮したエリスとの出会いが、あからさまに変。
この場面はあまりにも心外だった。
原作の、わざわざ教会の前で泣いてみせるエリスというのが
個人的に非常にツボだったのだが。
鴎外はちゃんと、エリスの媚態というものを表現していると思う。
だからエリスがこんなことやっちゃあ、いかん。
(これも計算のうち・・・という感じでもないし)
2、豊太郎の母親が免官騒ぎのときに存命している。
免官と母親の死のダブルパンチでこないと、
エリスにおぼれた豊太郎はかなり安易でバカな男とも思えるし、
原作の「母親に逆らえない」設定が、変わってしまう。
恋を前面に持ってくるための演出なのか?
2009/09/26▼
2009-09-26▼
格調高い文体に対する食わず嫌い
森鴎外の文体は、明治の文人の中でも格段に「カタい」。漢文のような言い回し、唐突な外来語の引用、句点・読点の打ち方などで表現される呼吸や間も、音読してみりゃ、いかにも明治の大日本帝国らしい文豪だなと感じざるを得ない。
そう言った所が、べらんめぇ調で語る夏目漱石作品と違って、読者の食わず嫌いが起きがちな森鴎外作品なんですけども、『舞姫』なんて元々が「国のカネで留学した将来有望なエリートが現地でかわいいコと恋に落ちて、さあどうしよう」という非常に現代的な内容ですので、漫画にすると実像がわかりやすくなります。
エリートとしての将来、国家に果たすべき義務、上司との確執、友人の心配、許されぬ恋・・・そんなこんなで明治の男は悩むのですw
近代以前ならこんな悩みは無く、大正時代ならロマンに流れるでしょう。古い時代の美徳と新しい時代の個人主義、現実と理想の間に揺れまくっていた「近代の夜明け」に生きる青年を描いた一作。「文豪・森鴎外の作品だ」と身構えて読むより、漫画でサッと読んだ後で原典も読んでみようかな、と気軽に構えて良いのではないでしょうか。
ただ、作画レベルが少し残念。
2008/12/27▼
2008-12-27▼
おもしろい。
おもしろいですね。
ストーリー的にはどうも納得できない面もありますが、当時のエリート意識も垣間見えておもしろいと思いました。
森鴎外の顔は頑固者の顔です。なので、小説もお堅いものでしかないと思っていました。しかし、なかなか重い題材を扱っているはずなのですが、ストーリーの骨格が軽く感じます。森鴎外とはこの程度の男なのだな・・・などと思ってしまいました。まあ、平たく言えば無責任な軽いヤツということです。・・・マンガのせいだからかな?
小説を読んでおきたいと思います。
日露戦争の時に、海軍のようにパンや肉食を勧めればビタミンB1が取れて多くの兵士を死なせずに済んだのに、変な意地と視野の狭さから陸軍の兵士に白米を食わせて「脚気」にさせて死なせた罪は重く、その責任をとらない体質は、小説にも現れているということでしょうか。
2008/12/27▼
2008-12-27▼
最後の救い
舞姫の漫画化。
実は原作をそのまま漫画化してるのではなく結構漫画オリジナルなエッセンスもあります。
エリスが豊太郎のことをぎこちなく「トヨ」と呼ぶあたりが
国を越えた恋愛を感じさせてくれます。
ドラマ中ではかなりしっかりした近代的な御嬢さんで
このギャップが面白いです。
あと原作よりも豊太郎の友人の相沢くんのウェイトが大きく
色々と豊太郎やエリスに関わる事によって原作では描かれていない
破局の真相も描かれています。
ものすごく絵は荒いのですが、生々しい生命力に溢れています。
この本のラストは原作には描かれていないオリジナルのラストですが
この絵が無ければ感動できなかったでしょう――どんな形であれ生まれてくる命は尊い。